世界遺産としての価値
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園比屋武御岳石門 |
(1)登録資産を構成する個々の記念工作物及び遺跡は琉球の立地的特性の故に、日本、中国及び東南アジア諸国との政治的・経済的・文化的交流の過程で成立した独立王国の所産であり、独自の発展と経過をとげた琉球地方の特異性を示す事例群である。
(2)登録資産のうちグスク跡は、日本列島最南端の島嶼地域に展開した農村集落を基盤に成長した豪族層が、政治的な統合と連合の過程で形成した防衛的な城塞施設の考古学的遺跡として極めて貴重な事例群で、今は失われた古い琉球社会の象徴的存在である。同時に、グスクは歴史的に農村集落の中核をなしており、地域住民にとって先祖への崇拝と祈願を通じて相互の紐帯を確かめる精神的な拠り所として、今なお琉球文化の重要な核心をなしている。
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復元された久慶門(首里城跡) |
(3)登録資産を構成する個々の記念工作物と遺跡及び文化的景観は、当時の琉球の土木、建築、造園の各技術が独自に高度な文化的・芸術的水準を保っていたことを例証する極めて重要な事例である。とりわけ玉陵や園比屋武御獄石門等の石造記念工作物や、野面積から切石積へと変化するグスクの石積あるいは、アーチ式の石造門等には、中国や東アジアの石造建築等の影響が濃厚に見られるとともに、琉球独自の素材を活かした優秀な意匠・技術を認める。また、識名園の平面配置や景観、アーチ式の橋や石樋等の施設には、同時代の日本庭園と中国庭園との融合の結果生まれた琉球地方独特の空間構成や意匠が見られる。
すなわち、これらの個々の資産群は、琉球王国の成立期から確立期における石造記念工作物や文化的景観の優れた事例である。
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座喜味城跡 |
(4)登録資産を構成する個々の記念工作物と遺跡は、琉球地方独特の信仰形態の特質を表す顕著な事例である。とりわけ、各グスクには農村集落の信仰上の聖域的機能を持つものも多く、現在でもノロと呼ぶ神女を中心として祭祀行為が行われ、グスクは学術的な重要性を有する遺跡であるとともに、地域住民の精神的な拠り所ともなっている。また、国家の祭祀拠点であった斎場御獄は、峻厳な岩塊と鬱蒼とした叢林が聖域としての御獄の本質を示しているだけでなく、樹叢の間からは東方の海域とそこに浮かぶ小島が望まれ、ニライカナイと呼ぶ神の国は海の彼方にあるのだとする琉球独特の自然崇拝的な信仰思想と緊密に関係する文化的景観の顕著な事例である。琉球地方では、このような自然崇拝的な信仰思想に基づいて、現在でも各種の宗教儀礼や祝祭が盛んに行われており、住民の生活や精神の中に資産が活用され、文化として生き続けている。
また、これらの資産群は、沖縄島が第二次世界大戦時に戦場となったことによって被った破壊から、沖縄県民が復興するうえでも、重要な精神的拠り所としての役割を果たしてきた。
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